【経営計画と諸仏の大道】
 今日ほど医療経営の先行き、見通しが見えにくい時代はかつてなかった。一方、戦後我国の大企業や公的企業においては通産省や農林省の手厚い保護に守られた時代から外圧による自由化や規制撤廃の波を受けて、ぬるま湯から脱し、今日世界有数の企業や国内の優良産業に変身したところが多い。翻って医療もやっと一般企業並みに保護や規制を取り外し、医療の質の向上と効率化を促すために、医療機関の自助自立を求める大きな時代の転換期に来たと言っても過言ではない。先が見えないから霧が晴れて見えるまで待とうといったのでは時代に取り残されるし、それだからといってただやみくもに行動してみても無駄なエネルギーを費やすばかりで疲労困憊で消耗してしまう。そうならないためには見えないからこそ経営者の勘と目標の仮説を立てて検証しながら一歩一歩進んでゆくことが求められているのである。すなわち経営計画が必要とされる所以である。

◆経営計画のポイント
経営計画を図式化すれば、

  1. ロマン・ビジョン・目標
  2. 現状の置かれた経営環境 
  3. 政策・施策 

の順序で考える。よく見る手法は予測(コンピューターでもできる)・改善(コスト管理と診療報酬点数の選択)にとどまり、良くて再構築(リストラクチャリング )診療科目や介護分野の再編成に終わっているところが多い。今日のような大激変の時代にあっては予測・改善・改正レベルでは生ぬるい。 即ち革新が求められているのである。革新とは何か、それは過去からの延長で未来を考えるのではなく、未来がこうありたい、こうしたいといった本来あるべき姿を言葉や数値で目標化することである。それには現状をしっかりと見つめ、未来とのギャップをどう埋めてゆくか、具体的な行動に移す政策、施策を組織毎に落とし込んで目標必達の計画を立てなければならない。そしてこの経営計画書は壁や机に貼って、常に見えるようにA3用紙1枚程度に全てが表されることをおすすめしたい。 この純真な心から発する人々や地域にお役に立ちたいという祈りや願いが経営者として大成する王道である。道元禅師は全機の巻で「諸仏の大道 その究尽するところ 透脱なり 現成なり」と示している。昔から今日まで諸々の優れて悟った人達の歩いた大きな道、その究極のところは自我を離れた(透きとおって自我を脱した)自己本来の心で計画したところに成果が現れるものである。この道というのははじめから目の前に設けられた道ではなく、自分が歩いた軌跡が道となるものである。また、釈尊の残した言葉 教戒経に「もし、念を失する者は、即ち諸の功徳を失す。もし、念強堅なればたとえ五欲の賊中に入るといえどもために害されず、例えば鎧を着て陣に入れば即ち怖るるものなきが如し、これを不忘会と名づく」と。念ずる、祈る心が強ければ強いほど何物にもさまたげられずに物事は成就することを示されている。「念ずれば華開く」も同義で、結果は後からついてくる。