企業も巻き込みボランティア運動 地域協力が治療・ケア【精神病院経営探訪】その⑥

医療法人立川メディカルセンター柏崎厚生病院 (新潟県立川市)

■イギリスとの違いに愕然 わが国医療に警鐘を鳴らす

 新潟県柏崎市のほぼ中央に位置する医療法人立川メディカルセンター柏崎厚生病院(精神科・神経科・内科・歯科)。柏崎市は山や海、そして刈羽平野の四季折々の表情を楽しめる、自然環境に恵まれた地域である。豪雪地帯の山間部では過疎化が進んでおり、二次医療圏全体で高齢化率が23.3%と、深刻な問題となっている。医療法人立川メディカルセンターは1956年、新潟県長岡市に開設した立川総合病院を母体とし、85年に精神科単価140床の柏崎厚生病院をオープン。いまでは悠遊健康村病院、立川総合健診センターなどの医療機関に加えて、晴麗看護学校、晴陵 リハビリテーション学院などの各種教育機関を擁し、同院ともに地域医療を担っている 柏崎厚生病院の松田ひろし氏は87年の院長就任以降、診療の幅を痴呆性老人のケアまで広げ、在宅福祉へも積極的に取り組むなど、同院は地域の保健センターとしての役割も果たしてきた。松田院長は、「施設の基盤は地域にあり、逆に地域自身が病者に対して治療的に関わりを持てる状況にあることが大切」と、同院の理念を語ってくれた。

 柏崎厚生病院の施設概要

内科病棟 (I) 60床 
痴呆性老人療養病棟(I ) (介護保険) 50床
痴呆性老人治療病棟(I )

50床

精神科療養病棟(I )(開放) 60床
精神科療養病棟(I )(閉鎖) 54床 
精神科急性期治療病棟(I ) 26床
介護老人保健施設米山爽風苑 150床
介護老人保健施設石黒爽風苑  40床
痴呆性老人グループホーム米山五楽庵 18床
老人性痴呆疾患センター  
よねやま訪問看護ステーション  
在宅介護支援センター  
精神科デイケア(大規模)  
精神障害者社会復帰施設 米山自在館  
生活訓練施設 20名
福祉ホーム 10名
精神障害者グループホーム米山荘 4名
精神障害者グループホームよねやま 5名
共同住居 三の丸 3名

 

 さらに氏は、東京でのドクター経験をもとに、現在の都心部での医療にあり方に警鐘を鳴らす。 「都市部では現在、患者が地域や家族から隔絶された状態にあるケースが散見されます。これでは治療効果が上がりにくいのは明らかです。病院だけでなく、地域社会との連携が必要といえるでしょう。」社会的な取り組みの必要性を氏が実感したのは留学時代。イギリス留学をしていた氏は、日本との社会性の違いに驚嘆したという。「イギリスでは平均在院日数が二週間程度で、地域のケースワーカや保健師による活動が盛んなのです。必要に応じて一日に三~四回も患者を訪問しており、共同生活の場である小住居に帰り、地域でケアを継続して受ける体制が整っています。そうしたイギリスの実情を体感した経験が、『われわれも社会全体の取り組みとして患者さんをフォローしなければ 』という当院での活動方針に生きています」氏は、地域社会への理解と協力を求めるべく、①地域団体などに対する講演啓発活動、②柏崎刈羽の精神保健を考える会(商工会議所、家族会、メンタルネットワーク会議、 就労推進事業、痴呆を考える会など)の設立・運営に貢献、③地域65社の企業とタイアップし、「柏崎晴風会」を発足。イベントにボランティアとして協力―― といった活動を行っている。なかでも地域企業を巻き込んだイベントやボランティア活動は、地元の産業活性化や地域との距離短縮効果、さらには患者に対する理解促進など、地域住民にも高い評価を受けているという。

■行政を引っ張る意気込みで理念を貫く

 同院では患者や家族に対して、積極的にアンケート調査を実施している。開始当初は「接遇面や設備面で数多くの意見をいただいた」とのことだが、その意見を真摯に受け止め、職員に周知徹底を行っている。松田氏は、「アンケート調査により、スタッフは患者や家族の視点に立つことができるようになり、より高いレベルでの接遇や施設改善を行うことが可能になりました」と、アンケート調査の効果を強調する。さらに、それら患者の声に応えるべく、医療機能評価機構の認定や、精神病院として他にさきがけてISOの取得をしている。また氏は、「需給バランスは病院が考えるものではありません。地域にとって必要だと感じたら、たとえ利益が少なくとも行うべきと考えます。収支などは事務方が考えればいいことなのです」と明言。アンケート調査以外にも、「ボケ110番」や「患者ソーシャルクラブ」などを開設してきた。収支的にはマイナスになりかねない試みではあったものの、結果、これらの取り組みにより患者や家族に対する安心感や信頼感を勝ち得ているのだ。診療報酬による制度化前から365日のデイケアやナイトケアを行うなど”行政の後追 い”ではなく常に正しい方向性に”行政を引っ張る”意気込みで理念を貫く同院。目先の利益を追いがちな昨今の医療界において、同院のような地域ニーズを重視するスタイルこそ、現代に求められている医療といえるのではないだろうか。

( この記事は2002年10月号「フェイズ・スリー」に掲載されました。)