激変する医療改革の中、今こそ戦略的な病院づくりを! その5

 当レポート(その5 2006年4月度)が発行される折は、06年度医療改革の実施と診療報酬の改訂が実施されている。3月末までに今回の医療保険、介護保険の改定内容の個々の提示があり、各医療機関において診療報酬の影響度シュミレーション(ほとんどが減収予想である)がなされ、得たる予測に対して理事長院長から全職員にいたるまで、その厳しい経営環境に心して対すべきとの決意の時を共有したものと思う。当レポートは「戦略的な病院づくり」をテーマに連載を重ねてきたが、今号はこの機会に合わせ、改めて「基本に帰る」事を課題としたい。

1.『経営理念』を職員1人一人のものにせよ

 病院機能評価受審を機会にあらゆる医療機関にて「病院経営理念」の策定がなされている。しかし、果たしてこの医療機関毎の策定された「経営理念」がその病院の目指している真の目的、目指している医療の質とサービスの提供に合致しているものなのだろうか。また、全職員が自院の「経営理念」を自らのものとし、理解し、日常の言動に取り入れ協調しているのか。反面、当該地域社会から、患者家族から、行政機関はもちろん他の医療機関から、関連する保健施設、福祉施設等から正しく理解され、協働する立場となっているのか確認しよう。再確認しよう。更に再々確認しよう。数年前、鹿児島県の某病院では、医療環境社会環境の変革に対応して「経営理念」の見直し、策定に取り組んだ。 『地域社会において自院はどうあるべきなのか、自院は地域社会から何を求められ、期待されているのか』を課題に、全職員に「企画・提案」として参画を求めた。結果、280名の職員にて提案320件。目的に沿ったレベルの高い提案が相当数あり、職員の関心を得たとの実感を喜んだ。厳正な審査の結果、最優秀賞として採用されたのは、入職5年の臨床心理士(女性)であった。彼女は更にロゴマークも採用され、全職員の全体集会の場で理事長より表彰され、金一封を受領した。この場で当院は全職員が新しく策定された「経営理念」の下に一体化され、協働、協調する体質が生まれた。このような「お祭り」も有効で、必要である。激変する医療環境の中、旧態依然たるお題目的な「経営理念」。お仕着せ的トップからの一方的な「経営理念」。これらの体質が懸念される医療機関は今こそ思い切って自院の「経営理念」を見直し、再構築する良い医機会である事を自戒するべきであろう。

 この事こそ『最も戦略的な病院づくり』ではないだろうか。

 提議する所以である。

【追記】 上記、「経営理念」が真に自院の心であり、顔である為、以下の与件が支える大きなポイントである事を提言する。

(1)法令遵守(コンプライアンス)公益法人たる医療法人の最も基本的なポイントである事は言うまでもない。堂々と王道を歩いてほしい。

(2)教育研修の充実を自院職員の心身共のレベルアップを期す事こそ地域社会への最大の貢献である。人材(職員)は最良の経営資源である。

(3)企画部門の強化を。情報は経営資源であり、次世代への経営対策は事業体としての医療機関として責務である。

(4)地域社会への情報開示と併せ、自院職員への経営状況を報告、理解と協調、経営参画を得る事。

(5)院内部門業務を経営単位とし、部門管理者を部門経営者(Profit-center)として位置付、経営参画と認識を涵養する事。

(6)好転する企業業績改善からくる給与等処遇向上ムードの社会環境の中、悪化する医療経営上の労務問題等、今こそ医療機関トップの方針・運営に関する『説明責任』を求められている折はない。心して対処してほしい。

健斗を祈る

強い病院づくりを楽しもう